08.03
Wed
こんばんは、水曜日記でござます。

先日、紆余曲折しかなかった機材導入がやっと理想の着地を迎えられまして。
とても嬉しいので、専門的な話ですが聞いていただけたらと思います。
同業の方や、検討中の方の少しはお役に立てるかもしれませんし。



ジュエリーの製作方法は、大きく鋳造(ちゅうぞう)と鍛造(たんぞう)に分かれます。
今日は鋳造の話です。

鋳造は、ざっくり言うと立体的なプリンみたいなもので型に金属を流し込んで固めて、取り出したものを磨くなどして仕上げていく方法です。

そのプリンの型を作る方法がいくつかありまして、そのひとつが一度金属で作った完成物をゴムで型取りする方法です。
写真のオレンジの部分がゴム型です。

IMG_9689.jpg

複製を作るためには、ゴム型にワックスという蝋を流し込み、写真の緑のプラスチックのようなものをいくつも作って量産する、という方法が一般的です。


今、ここまでさらっと書きましたが、この写真を見て息、あるいは唾を飲む同業の方もいらっしゃるのではと思います。

このワックスにも種類がありまして、一般的にゴム型で取れるのはインジェクションワックスといって、溶解温度が低く粘度も低いため型取りし易いものの、固まった後の加工の際にベタつくため、扱いにくいんです。

そしてこの緑のプラスチックのようなワックスが、ハードワックス。
固まった後の加工がめちゃくちゃし易いものの、溶解温度が高く粘度も高いためゴム型を取りにくい。
ちなみに、今ゴム型からハードワックスを取ってくれる業者さんは、私の知る限りではゼロです。あったら知りたいです、本当に。

インジェクションワックスでも素晴らしい仕事をなさる方はたくさんいるのですが、、根性ですね。あと多分、愛もあろうと。見かけるたびに感服します。

話が逸れましたが、そんな加工のし易いハードワックスで複製が取りたかったんです。
サイズ展開はもちろん、バリエーション展開や研究もしやすくなるんじゃないかと思っていて。


ただ、ここまでくるのがなかなか大変だったので暫定的ではありますが、機材と使用方法についてシェアできたらと思います。

正直、何年もゴム型でハードワックスを取るための検索をしまくってきたのですが、これといった情報は得られなかったんです。なので意味のあるものになるのではと。


まず、機材はROMANOFF社製のワックスポットミニです。

早速ですが、今ウクライナ情勢の絡みもあり全然日本に入ってくる目処が立っていないそうです。
シーフォースさんをリンクに貼りましたが、他社さんも壊滅状態で私は日本全国片っ端から電話をかけまくって、大阪で見つけました。

ただ、落ち着いたら入ってくると思いますので話を進めます。


ちなみにこの機械にした理由は、121℃の最大溶解温度でした。
ハードワックスの溶解温度は約105℃-116℃とされていて、この機械以外は最大温度が110℃以下であることが多いため対応できない可能性が高いと踏んで、これ一択で探しました。

商品が届き、早速空気圧をかけたいものの口径(約7mm)に合うホースが地味になくて内径8mmのものと両端にミニクランプ、足踏み式空気入れで対応しました。今の所大丈夫ですが、空気入れ側の接続がデリケート(ちょっとしたことで圧に負けて空気が漏れる)で不安はありつつです。でもいけます。

さて、ワックスを溶かそう。ということでポットの中にワックスを入れてヒーターを入れます。
もちろん温度設定はマックス。

中が最高温度に達するとランプが消えます。ふたを開けます。結構固まりがあります。混ぜてほぐします。温度が下がったのでランプ点灯。待ちます。

というのを繰り返して中のワックスが液状になるまで数時間かけて溶かします。
溶けたら、空気入れで圧をかけます。単純に密閉された庫内に空気を送るためここでも温度が下がるので、圧をかけてから温度が再度上がるまで待ちます。

ちなみに、かける圧は27-25psi
ほとんど最大です。

準備が整ったのでゴム型に注入します。

1回目はうまくいけばすんなり出るかもです。
でも、途中で止まるかも。それは出口の部分の温度が低くなるため半固体状態なので流れないんです。

そうなったら、耐熱手袋をして片手に板で挟んだゴム型をスタンバイ、もう片方の手で出口を押して半固体部分をにゅるっと出します。

このにゅるっとが重要で、出てくるスピードが上がった(=液状が出てくる)瞬間にすかさずゴム型を合わせて中に注入するわけです。

これが遅れると最後まで流れなかったり入り口で固まったりしそう。
まだ失敗していないのですが、かけている圧力が高いので120℃のあんかけ水鉄砲をくらうという、火傷必至の事態もゼロではないのかも。。気をつけます。


うまくいくと、こんな感じに。巣もはいっていないんです。素晴らしい。


IMG_9690.jpg

自分でやってみて、ゴム型を作る人の計算力半端ないなと思いました。
所々にちゃんと隅々まで流れるように細工がしてあって、凄まじいなと。

こうしてハードワックスの型取りは、個人でもなんとか可能ということをお伝えできたらと思います。
でも色々マックス設定で機械に負荷をかけまくっている、かつご覧の通りかなり面倒臭いです。

ちなみに溶解温度は116℃でも粘度が低く加工しやすいことからグリーンのワックスを選び、溶解温度が105℃と低いブルーのワックスを選ばなかったのも難易度を上げているかもと思っています。

グリーンが終わったらブルーにしようかな?できるかな?など思いつつ。


IMG_9686.jpg
耐熱手袋はあった方がいいです。軍手では無理かも。



というわけで今週は珍しく機材について。
過去の私のような方の目に留まって、お役に立てたら幸いです。

普段の水曜日記を読んでいただいている方には、atmosphere peaceの新たな一面がご覧いただけたかも。
など、頑張ったのでちょっと得意げに終わります。ふふふ。




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ウクライナ侵攻が一日も早く、なるべく平和な形で終わりますように。
月初に細々寄付をしながら、やるせない気持ちになりますね。
終わったらきっとこの機械の欠品も、すぐさま解消されると思います。



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コメント
こんばんは。これは、もしかして雲さんですか?こんな風な工程を経て作品ができるのですね。夢中で見ちゃいます。
とも | 2022.10.08 19:13 | 編集
はい、こちらは雲の原型です^^
この状態からお手元に合わせて、全体を拡大するような形でフォルムを再構成していく感じです。
いつか動画などご用意できたら楽しそうですね。
コメントありがとうございます♪
atmosphere peace | 2022.10.08 19:42 | 編集
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