03.16
Wed
こんばんは、水曜日記でございます。

温かくなってきて、花も咲き始めていて。春ですね。
このブログを書き始めてからずっと、今日みたいな温かな春の日を迎えるたびに書きたいなと思いながら見送ってきた話があります。
今日は、それを書こうと。

私は歯が好きで歯科助手をしていた、というのはちょくちょく話しているので知っている方も多いと思うのですが、今日はその医院のお話。

私が勤めていたのは、伊勢佐木長者町のはずれにある小さな歯科医院でした。
患者さんのほとんどが生活保護を受けている方で、みんな歯は漫画みたいにぼろぼろ。ついさっきまで道で寝ていたんだけどね、というような風情の方や、過去非常にやんちゃだったと思しき方、はたまた口腔内が金庫のような金歯ぎらぎらのおじいさんなど。

春吉さんはそんな患者さんのひとりでした。
お若い方には伝わらないかもですが、裸の大将のコスプレをした小林亜星という表現で誰も間違えなさそうなそんなおじさんでした。
春吉さんは右足がなくて、義足をつけていて。
働き始めでただでさえ緊張している状態かつ、義足をつけている方と接したことのなかった私は多分すごくどぎまぎしながら、診療台に横になるために春吉さんが外した義足を、近くの壁に立てかけようと両手で抱えて運ぼうとしたんです。
そしたら、春吉さんが後ろから「俺の足盗ったな!」って言ったんです。
びっくりして振り返ると、すっごい悪い、そしてすっごいいい顔で笑っていて。
その一瞬で私は、こういう時、少なくとも春吉さんに対してどういう心で居たらいいのかを教えてもらった気がしました。

春吉さんは、わがままだわ言うことを聞かないわ文句を言うわでしたが、私や同僚も同じぐらい容赦しなかったので診療はいつもにぎやかで。

義歯が入って、診療が終了して随分経ってから春吉さんにいつも付き添って来ていた施設の方が他の患者さんといらした時に、春吉さんが亡くなったことを聞きました。

春吉さんはいつもあんな態度だったけど、実はうちの医院に来るのをとても楽しみにしてくれていたそう。

突然知った訃報に私も同僚たちも動揺していたのですが、その時に施設の方が付け足すように「春に亡くなったんです」と言って。
悲しいことではあるけれど、でもそこにいた全員が(ならよかったんだ)というような本当によく晴れた春の日のようなホッとしたような気持ちに包まれた感覚を今も覚えていて。

春が来たなと思うたびに、思い出します。




あの医院での話は、本当に山ほどあるのでまたどこかで話したいなー。
どれも今思うと結構素敵。



そんな晴れた春の日に。

ではまた来週の水曜の夜に。





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comment 2
コメント
貴重な経験でしたね。思い出の中で生きてて、時々思い出すと、ご本人も喜んでくれるかも。
かさい | 2022.03.16 23:29 | 編集
かさいさん、コメントありがとうございます。
ほんと、そうだといいなと思いますし、そうだと思います。
atmosphere peace | 2022.03.17 10:09 | 編集
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